そんな顔は知らない
(CP:スパ→アン)
そんな顔は知らない。
あんたがそんな顔するなんて知らなかった。
否、知る機会がなかった。
だってあんたはいつだって笑って怒って。
一度たりともオレの前で辛そうな顔なんてしたことなかった。
「このひとを攻撃してはだめ・・・っ」
「・・・・・・・・」
両腕をあげて、アイツの前に彼女は立ちはだかった。
「なんで、」
「・・・・・・・私は前世でこのひとを守れなかった・・・・だから、今度は絶対まもるの」
「・・・・・・・」
意志の強い目。いつもオレの前で優しそうに笑ってた彼女の瞳はどこにもなかった。
眉もきゅっと寄せられて、瞳には水の膜が張っているようにも見えた、けど実際はどうか確認することはできない。
近づくことを、今の彼女は許してくれそうになかった。
「・・・・・・・・オレたちよりも?」
ぽつりと呟いた、ぼやいた言葉は彼女の耳には届かない。本音は届いてほしくないから好都合だった。
前世の彼女(彼、というのが彼女の場合正しいのだろうが)とヤツの関係を探ろうなんて思わない、知りたくも無い。
ただ、オレは今心底怒ってる。
彼女の行動にも、彼女をこうさせる理由であるヤツも、彼女のきもちを動かせない自分にも。
なんて醜い感情。
彼女に自分がしらない部分があるのが腹立たしかった。
しらない、しりたい、しりたくない。
矛盾した感情は余計に醜い感情を増加させるだけで、自分の中で消化されることはない。
「お願い、みんな・・・・・・・・おねがい、スパーダ君」
彼女がオレの名を呼んだ。自分の顔が歪むのがひどくわかった。
なんで。
「・・・・・・・そんな顔、知らねぇ」
たいせつなひとを見るみたいな目でオレを見るんだ。
end