全てのものはそこへ帰っていく



(CP:スパアン)





全てのものはそこへ帰っていく





旅を終えてスパーダは実家へと一度戻った。
一年以上も帰っていなかったために、両親をはじめ兄弟も驚いた様子を隠せなかったようだ。


「・・・・・・・おかえりなさい、スパーダ」

「・・・・・ただいま」


なんと会話していいのかわからない。
母親は嬉しいようなそうでないような、とにかく掴みどころのない表情をしていて、スパーダは何も言わなかった。
母親。別に久しい感じはしない。
旅の仲間に、似たような存在の人物がいたからだ。


(・・・・・・・・アンジュ)


彼女は聖堂を建て直すため、(別の目的もあったように思うが)アルベールと共に行ってしまった。
彼女は今やはりテノスにいるのだろうか。それともナーオスでアルベールといっしょに?
考えることは彼女のことばかりだ。それも仕方ない。
だって、自分は彼女に伝えはしなかった。
この想いが本気の本物だということを。彼女に伝えては迷惑だと思った。
だから、冗談のままで済ませた。


「言えば、何か変わったかよ・・・」


誰に言うでもない。自分から自分へ向けてのことば。
迷惑だと思ったから?そうではないだろう。


「・・・・・・・・たんに、こわかったくせに」


伝えるのがこわかった。
これは、母親に甘える子供染みた感情に似ている。
旅が終わった。だが、また恐らく自分は旅に出る。今度こそ、伝えられるように。


(強くなってやる・・・あんたをまもれるように)


*********


「とうとう言ってくれなかったわね」

「どうかしましたか?アンジュ」

「いいえ、何でも無いです」

「?」


アルベールと歩きながらアンジュはぼやく。
とうとう彼は最後の最後まできもちを伝えてはくれなかった。
知っていたのに。彼の気持ちに本物を見出していたのに。


「まぁ、実家に顔を出すって言ってたし。大丈夫よね」


アルベールに聞こえない声で呟く。
彼は実家へと一度戻ると言った。
とにかく、自分は自分でやらなければならないことをしなければ。
全て、一度はそこへ帰らなければならないのだ。
いくらきもちが本物でも。いくら、お互いのことを想い合っていようとも。


「焦らなくていいわ、アンジュ。だって、彼にはまだ成長する必要があるのよ」


自分に向けて言ったことばには、母性の感情と異性の感情が織り交ざっていた。



「すきだって、言うまえに」


end