それでも君をまもれるか1

(CP:スパ→アン←リカ)








それでも君を、まもれるか






「あんたたちさぁ?少しは落ち着きなさいよね」

イリアが呆れたように言う。心なしか怒っているように見えるのは気のせいではない。
実際、怒っていたのだ。もう過去形だが。

「イリア、いいじゃない。もう済んだことだし・・・」

「アンジュはいいかもしれないけど、危うく誤射しちゃうとこだったのよ?危ないったらないじゃないっ!」

「すまない、アニーミ」

「・・・・・・わりぃ、イリア」

「・・・・・わかったんならいいけどさぁ」

つまりはこういうことだ。敵との戦闘中、アンジュを庇うようにして戦っていたリカルドの前に、スパーダが出てきてしまったのだ。
辛うじて標準をスパーダから外したリカルドだったが、引いてしまった引き金から放たれた弾丸は敵に命中し運悪くも敵を怒らせてしまう結果となった。
それを押さえこんだのがイリアだったのである。

「イリア、スパーダも仲間のことを思ってのことだし・・・今回は多目に見てあげようよ」

「ルカ!あんたはそうやって甘いから・・・!」

「イリア姉ちゃんはムチが多すぎや。アメとムチは使いようやで?」

「・・・・ったくもう!とにかく!スパーダとリカルドはもう少し落ち着いて戦ってよね!」

どかどかと歩き始めたイリアにルカは慌ててついて行く。エルマーナは今にもルカに怒鳴りそうなイリアを落ち着けに駆け寄る。
取り残された(未だ歩みを始めようとしない)三人はそれぞれ小さく溜息を吐いた。

「スパーダ君、良かったわね。なんともなくて」

「・・・・・・おう」

珍しく素っ気なく返事をしてスパーダはそのまま小走りで行ってしまった。
リカルドも「次から気をつける」と言い残して先に歩き始めてしまった。
ぽつんと置いて行かれたアンジュは、もう一度今度は盛大な溜息を吐いた。気付いているのだ。
スパーダの飛び込んできた理由に。彼が自分を想って行動したことなんだとも。

「・・・・・・・そこまで必死に前に出なくても、ちゃんとわかってるのに」

彼のきもち(面と向かって伝えられたわけではないが)に今はまだ答えられない。
自分のきもちが定まっていないからだ。だけど、自分が彼に対して特別感情を抱いていないわけでもなくて。
これが今まで経験したことのある恋愛感情と合致するかが、わからなかった。
今までとは違う。だからこそ、答えられない。

「でも、心なしかスパーダ君・・・焦ってるように見えるのよねぇ・・・なんでかしら?」

みんなに完全に置いて行かれないためにも歩みを始める。
護衛という仕事をしておきながら、自分を置いて先に行ってしまうなどどうなんだ、とパーティの中で背の高い彼の背を見つめる。

「男のひとって、わからない」

呟いた言葉はふたりの男の背には届かなかった。








end