静かに夜、君の手を壊れ物を扱うかのようにとった。
すると君は驚いた顔をして、じっと俺と見つめてきた。



【守ると決めた君の手は】



思いのほか小さくて、思わずキスをした





「どうかされたんですか?リカルドさん」

小首を傾げる君に思わず苦笑が零れた。
普段はしっかりしている雰囲気の漂う彼女が、このように二人きりになると和らいだものになるのに随分前から気付いていた。

「いいや、」

「?」

ガルポスに到着し情報を集める一日が終わり、宿で昼間とは違い夜は涼しいことをいいことに俺は宿の外で夜空を眺めていた。
すると、寝付けなかったらしいセレーナが窓の外にいる俺を見つけて現在に至る、ということだ。

「・・・・・?」

「星がきれいだな」

「・・・そうですね」

「セレーナ」

「はい」

とった彼女の手を見る。戦闘ではサポートなど戦力になる彼女の手も、やはり自分の知る限りの女性のそれで。
傷ひとつない、月明かりに照らされた白い手に自然と目を細める。
そんな手を見つめたままの俺をいぶかしんで、セレーナは再び首を傾げた。

「本当に、どうかされたんですか?」

「いいや、どうもしていない」

「私の手に、何か?」

「いいや、」

思ったよりも、やはり小さいな。などと勝手に思って、そっとくちびるを寄せた。

「わ、」

小さく彼女の声が聞こえたが、気にしなかった。




守ると決めた君の手は、

思いのほか小さくて、思わずキスをした。




end

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日記でやった創作意欲もりもりこバトムのひとつ「守ると決めた君の手は」でリカアン。
あまりにも儚げで小さな手に思わずキスをしてしまったという、お話。