動かない平行線
「抱きしめて、下さい」
か細い、静寂に飲み込まれてしまいそうな声。然しリカルドの耳には当然届いている、何せ彼の神経は今、全てアンジュに注がれているのだから。
「………」
彼の力なくぶら下げられた手がぴくりと蠢く。だが直ぐに其れは拳へと変えられる。歯を噛み締めるリカルドを見て、アンジュの瞳が、瞳孔が、涙で歪む。
「…如何して、リカルドさん」
「……セレーナ……」
遣る瀬無いながら、何処か緊迫した空気が漂う。蒼穹の瞳に溜められた、今にも零れそうな涙を見つめて、リカルドは何もしてやれぬ自分に苛立ちを覚え、同時に情けなくなる。
この見えない壁を乗り越えるには、勇気以上の何かが必要なのだ。
どうしてこの腕は、君を抱く事が出来ない。
何の理由があっての抵抗感だ、愛している事に偽りはない筈なのに。
一体何が必要なのだろう、この壁を乗り越えるには。
「リカルドさん、お願い…」
欲求不満だって、自分勝手だって分かっている。
けれど、心は、胸中はいつだって絶えず貴方を求めている。
想いは、貴方に届かない侭どんどん蓄積していく。
いつか爆発してしまわないかと不安になるくらいに。
一言一言、どちらかが発する度に沈黙が生まれる。言葉が見つからないのだ。己の語彙の無さか、否、そんなものでは無いだろう、二人の会話を滞らせるのは。
「…すまない、セレーナ。俺には、今の俺には、」
続かない言葉。本よりアンジュには予測できるであろう、その続きを。それを理解した時、彼女は何を思うのか。俯き、紅く火照った顔に影を落とす。
一度愛を確かめ合ったというのに。
一度愛を誓い合ったというのに。
如何してこんなにも、不安が胸に貼り付くのか。
如何してこんなにも、すれ違ってしまうのか。
近づいては遠ざかり、温まっては冷えの繰り返し。
噛み合わない歯車みたいに、歩調が合う事もなく。
意味の無い深読みの連鎖、求める正解には辿り着かない侭、
二人は迷情に苛まれながら、行く宛ての無い道を彷徨っている。
( こんなに、愛しているというのに )
分かっている、無条件で貴方の愛を求めている自分の愚かさを
分かっていた、素直に君を見つめる事が出来ない自分の弱さを
それでも、これ以上進む事が出来ないのは何故?
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「Nirvana」の翳さんから7000hit祝いにいただきました!
リクエストとして、「もどかしいリカアン」を頼みました〜vv
なんだか、両思いなのにどうしてか思いが伝わらなくてもどかしいのっていいですよねって
メールで話してました(笑)なんだか、お前この、リカルド抱きしめてしまえよ!って
私がもどかしくなってます(爆)いいですね・・・こんなの。私には書けないです・・・
翳さん有難う御座いました!
素敵な翳さんのリカアン(スパイリ+ルカ)小説サイトはこちら↓